1999年の夏休み
この作品に演技者は4人しか画面に登場しない。
しかし演技者は、もっといるのである。なぜなら、声を吹き替えているから・・・
閉鎖空間のような学園を舞台に、5人の少年を4人の女優が演じているのだが、
声を含めると7人の女優が登場する。
声とアクションを別々にオーディションし、中野みゆきのように自分の
役を声では取れなかった役者もいるのである。
少年を少女が演ずるという、とっても際物な作品なのだが、その効果は
作品の中にあふれている。
20年近くすぎた現在、BLというジャンルが漫画界に確立されているが、
その世界とは一線をかくする名作「トーマの心臓」が原作である。
萩尾望都さんの原作本は、最近2冊で復刊されているので、それをお読み
いただければ、世界の違いは納得いただけると思う。
さて、この作品が少年の世界を築き上げているのかというと、そうではない!
女性が観た少年の世界である。映画とは虚構の世界でもあるのだから、そのこと
に不満はなく、こんなアヤシゲな世界を実写で提供してくれた監督には感謝
するところである。
漫画家の西原理恵子の「ああ息子」「ああ娘」(毎日新聞)という作品がある。
その中身は読者からの投稿をもとにして、息子編に続いて娘編が刊行されたのだが、
息子に比べ娘編は・・・いまいち面白みにかけているように思った。
これも読んでいただければ判っていただけると思うのだが、オバカのジャンルが
圧倒的に「息子」の方が広く・・・底抜けなのだ。
某我が家にも「息子」が一人いるし、我が身を振り返ってみても自信を持って
「ヤツラはナニモ考えてイナイ!」と、言える。
4人の少女女優のビジュアルはとても美しくアヤシゲであるが、ヤツラの
無思考なパワーは演技では届かなかったようである。
DVDで鑑賞したのだが・・・絵が甘い!・・・デジタルリマスター版の登場を
せつに望むところである。